国の有識者会議の座長で、全国特別支援教育推進連盟の宮崎英憲理事長は今回の結果について「今まで見過ごされてきた子どもたちにも目が向けられ把握が進んだとみられる。およそ1割は何らかの形で学びに困難さのある子どもが在籍している前提で、教育現場が対応する必要がある時代になっている」と指摘しています。
そのうえで「担任の先生だけでなく学校全体が連携してより効果的な支援体制を作っていくことが重要だ。通常の学級に在籍しながら一部を別室で学ぶ『通級指導』の充実が求められる。併せて通常の学級の担任が、さまざまな困難のある子を抱えながら、クラス当たりの人数が多く苦労している点も課題で、今後、検討が必要だ。学校現場や教育委員会、国などが一体となり、充実した教育をどう進めていくかが問われている」としています。
発達障害の可能性がある小中学生は学級に8.8% 文科省調査
発達障害の可能性があり特別な支援が必要な小中学生は通常の学級に8.8%、11人に1人程度在籍していると推計されることが文部科学省の調査で分かりました。前回10年前の調査から増加しており、支援の充実が課題となっています。
文部科学省は、ことし1月から2月にかけて全国の公立の小中学校と高校に抽出調査を行い、1600校余りの7万4919人について担任などから回答を得ました。
その結果、読み書きや計算など学習面の困難さや、不注意や対人関係を築きにくいといった行動面の困難さがあるなど、発達障害の可能性がある児童生徒は小中学校の通常学級に8.8%、11人に1人程度在籍していると推計されることが分かりました。
調査方法などは一部変わっているものの、前回10年前の調査の6.5%から増加しています。
また、今回初めて調査した高校では推計で2.2%でした。
文部科学省の有識者会議は増加の背景について、見過ごされてきた子どもも把握されるようになったことに加え、活字を読む機会や会話の減少など、生活習慣や環境の変化による影響も考えられるとしています。
一方、こうした小中学生のうち、学校の「校内委員会」で、特別な支援が必要と判断されたのは28.7%で、有識者会議では「支援の検討自体がされていない児童生徒がいると考えられ、学校全体での取り組みやそれを支える仕組みが必要だ」としています。
文部科学省は、有識者会議で具体的な対策を検討し、年度内に方針をまとめることにしています。
有識者「学校全体での効果的な支援体制が重要」
永岡文科相「年度内に『通級指導』の充実取りまとめる」
永岡文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「今まで見過ごされてきた困難のある子どもたちにより目を向けやすくなり、理解が深まったことが1つの理由として考えられる。また、子どもたちの学習や生活の習慣を取り巻く環境の変化による影響も可能性として考えられる。今回の調査結果を踏まえて、通常学級に在籍しながら一部の授業は別に受ける『通級指導』の充実について年度内に取りまとめる」と述べました。