「新語・流行語大賞」ことしは何? 年間大賞とトップテン発表

ことしの「新語・流行語大賞」が12月1日に発表され、年間大賞には、プロ野球、ヤクルトの村上宗隆選手の活躍で広く使われるようになったことば「村神様」が選ばれました。

「新語・流行語大賞」は1年の間に話題になった出来事や発言、流行などの中からその年を代表することばを選ぶ賞で、ことしは30のことばがノミネートされました。

この中のトップテンが1日に東京で発表され、年間大賞には、プロ野球で56本のホームランを打つなどの活躍をみせたヤクルトの村上宗隆選手に対し、SNSからニュースまで広く使われるようになった「村神様」が選ばれました。

トップテンとしては同じ野球に関連したことばとして、プロ野球・日本ハムの応援ダンスとして話題になった「きつねダンス」、時事問題や社会現象に関することばとしては元総理大臣の銃撃事件に関連して「国葬儀」と「宗教2世」、それにウクライナへの連帯を示すため読み方が変更されたウクライナの首都「キーウ」、さまざまな分野で値上げが相次ぐ中、円安基調が続く「悪い円安」が選ばれました。

このほか、関西の人の口癖、「知らんけど」、幅広い世代で流行した「スマホショルダー」、手前に並んだ期限の近づいた商品から買うようにしようという呼びかけ「てまえどり」、それに乳酸菌飲料の「Yakult1000」が選ばれています。

また、選考委員特別賞として、夏の甲子園で東北勢初の優勝を飾った仙台育英高校の須江航監督の発言から「青春って、すごく密なので」が選ばれました。

年間大賞とトップテン

ことしの「新語・流行語大賞」のトップテンに選ばれたのは次のことばです。
(「現代用語の基礎知識 選 2022 ユーキャン新語・流行語大賞」の説明より)

村神様【年間大賞】

東京ヤクルトスワローズの村上宗隆が7月に史上初の5打席連続本塁打を達成し、日本記録を更新。

10月のシーズン最終戦では56号本塁打を放ち、歴代単独2位を記録。22歳での50本到達は史上最年少を更新。

チームの勝利への貢献度が高い打撃に対してSNSで「村神様」とよばれるようになり、その後幅広くニュースでも使われるようになった。

きつねダンス

北海道日本ハムファイターズのファイターズガールによる応援ダンスが「きつねダンス」。

原曲・元曲は、ノルウェーの兄弟ユニット・イルヴィスが歌う「The Fox」。

親しみやすさや繰り返し聴きたくなる中毒性が話題になった。

国葬儀

国葬を定めた戦前の法律である国葬令は47年12月末で失効、現在の日本に国葬の根拠は存在しない。

戦前の国葬ではなく内閣府の行う国の儀式としての「国葬儀」とすることを閣議決定し、ただの儀式として法的にも弔意を強制するものではないとした。

くしくも、エリザベス女王崩御によりイギリスでは9月19日に「国葬」が、東京では27日に元首相の国葬儀が行われた。

宗教2世

「特定の信仰・信念をもつ親・家族とその宗教的集団への帰属の下で、その教えの影響を受けて育った子ども世代のこと」(宗教社会学者・塚田穂高)。

2010年代後半から当事者の側からSNSを中心に使われるようになった呼称。元首相銃撃事件後に容疑者の背景から一層注目されることとなった。

キーウ

ロシアによるウクライナ侵攻は終わりがみえない。

そんな中、ウクライナへの「連帯」も広まり、政府によりウクライナの地名をロシア語読みから「ウクライナ語読み」に変更することが発表され、発音・表記の変更が行われた。

「キエフ」だった首都名が一夜にして「キーウ」と変更された瞬問に、私たちは立ちあった。

悪い円安

22年の日本経済をおそった物価上昇。賃金が上がらない中での物価上昇により国民生活が厳しく圧迫されている。

円相場は1ドル=145円台まで下がり、1998年以来およそ24年ぶりの円安。円安基調はまだ続く可能性がある。

世界的なインフレ、コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、急速な円安を背景に、食料品、日用品、電気、ガスなどあらゆる分野で値上げも相次いでいる。

知らんけど

文末に付けて、断定を避け、責任も回避する言い方。

関西の人の口癖でもあり数年前から使われていたようだが、ここへきて関東でも目立つようになった。

責任逃れというだけでなく、すべてをひっくり返すようなおもしろさを若い世代が感じて話題になっているようだ。

スマホショルダー

男女の幅広い世代で流行した、肩からスマートフォンを斜め掛けできるアイテム。

形状はスマホケースにストラップが付いたシンプルなものから、コインやカードを格納できるものまでさまざまある。

「手ぶら女子」ということばも登場、財布の小型化など外出時の荷物が少なくなる傾向が続いている。

てまえどり

食品ロス軽減の観点から、スーパーなどで商品棚の「手前」から商品を選んでもらうようにする啓発運動のこと。

ついつい消費期限の長い、棚のいちばん奥のほうから商品を取りたい衝動に駆られることも多いが、意識を変えて手前から選ぶようにしたい。

Yakult1000

ヤクルトが発売する乳酸菌シロタ株入りの宅配飲料・Yakult1000(21年4月より全国発売)と、その店頭向け商品であるY1000(同10月)が発売直後から品薄を引き起こすほどの人気商品となった。

21年末ごろから「睡眠の質がよくなった」などの口コミがみられ人気に拍車をかけた。他社製の乳酸飲料まで売れる現象もおこった。

不安定でストレスフルな時代に、ストレス緩和、睡眠の質向上といった癒やしを求めるものに目が向けられるようだ。

選考委員特別賞

また、選考委員特別賞には次のことばが選ばれました。

青春って、すごく密なので

夏の甲子園で、宮城県の仙台育英高校が東北勢として初優勝。須江航監督が優勝インタビューの際に発したこのことばが多くの人の共感をよんだ。

22年に高校3年に進級した生徒たちは入学時からコロナ禍での高校生活を強いられた世代。その世代に向けた思いやりにあふれるエールであった。

受賞者のことば

式では、選ばれたことばに関わりが深い受賞者が登壇しました。

ヤクルト 村上宗隆選手(「村神様」)

「村神様」で大賞を受賞したプロ野球・ヤクルトの村上宗隆選手は「『村神様』ということばを作ってくれたファンの皆さんに大変感謝しています。このことばをきっかけに野球が日本中や世界中に広がってほしいです。来シーズンも『村神様』と呼ばれるような活躍をして、また新たなことばでこの場に立ちたいです」と話していました。

また、今の気持ちを打球に例えるとどうかを聞かれ、「気持ちはホームランですが、みんながこのことばを知っているのか不安な気持ちがあります」と話していました。

日本ハムの事業運営会社 尾暮沙織さん(「きつねダンス」)

「きつねダンス」の発案者でプロ野球・日本ハムの事業運営会社の尾暮沙織さんは「トップテンに選出していただき大変光栄です。当初は球場が一体となって楽しめるコンテンツをという思いで作った『きつねダンス』ですが、プロ野球界を飛び越えてたくさんの方に知っていただき、楽しんでもらえたことをとてもうれしく思っています。来年開業する新しい球場にたくさんの方に来ていただき、楽しかった、感動したと喜んでもらえるように、さらに面白い球場演出やエンターテインメントを作っていきたいです」と話していました。

中央大学文学部 宮間純一教授(「国葬儀」)

「国葬儀」の受賞者で、国葬の成り立ちや役割を取り上げ問題点を指摘した中央大学文学部の宮間純一教授は「21世紀の日本で国葬が行われるということにも大変な驚きを覚えましたが、受賞の連絡をいただいたときにも大いに驚きました。現在、政府、国会が国葬儀の検証を進めていて、こういった問題を次の世代に残さないために、今後の検証を注視していかなければならないと思っています。私は歴史の研究者で地味な分野だと思われるかもしれませんが、日本には優秀な研究者が多くいて、国家や戦争、宗教など、いろんな問題を考えるための大事な成果がたくさん出ています。こういう機会に歴史学に意味があると知っていただけるととてもうれしいです」と話していました。

荻上チキさん(「宗教2世」)

「宗教2世」への取材・調査を行った団体の代表理事、荻上チキさんは「ことし『宗教2世』ということばが注目された経緯というのは決して喜ばしいものではありません。現在、顔出しをしてリスクを抱えながら発信をしている宗教2世の皆さんに大きな負担がかかっている状況ですが、特定の個人に負担をかけず、どのような家庭に生まれ育ったとしても誰もが幸福にそれぞれの人生を歩めるような社会を作っていくため、私たちはこのことばを用いて議論を加速させることが大事だと思います」と話していました。

東京外国語大学 中澤英彦名誉教授(「キーウ」)

「キーウ」の受賞者となった、ウクライナ語読みへの変更を以前から提唱していた東京外国語大学の中澤英彦名誉教授は「私にとってはこそばゆい感じで、出さなかったラブレターに返事がきた、買わなかった宝くじが当たったような気分です。これは本来は私ではなく、ウクライナの方やウクライナの研究家が受賞するものを私が代理でいただいていると思っています。私がしたことは、『キーウ』をカタカナで書いただけです。それがいままでなされていませんでした。この転換というのはウクライナにとっても日本にとっても非常に重大な意味を持つと思います」と話していました。

日本経済新聞社 小栗太編集委員(「悪い円安」)

「悪い円安」に関する記事を書き今回の受賞者となった、日本経済新聞社の小栗太編集委員は「悪い円安ということばはおそらく日本経済の大きな転換点となった2022年を象徴することばだと思います。1つは、かつて自動車や電気製品などの輸出で貿易黒字を稼いでいた日本が、2022年は過去最大の貿易赤字になりそうだという転換点。もう1つは、空前の値上げラッシュで、デフレからインフレに変わる転換点だった年でした。この2つの転換点を言い表すことばとして『悪い円安』がふさわしいと思っています」と話していました。

生活協同組合コープこうべ 益尾大祐さん(「てまえどり」)

「てまえどり」の普及に取り組んできた「生活協同組合コープこうべ」の益尾大祐さんは「組合員とともに取り組んできた『てまえどり』がこのような賞を取ることを大変うれしく思っています。『てまえどり』の運動はいまから6年前に、販売期限切れによる廃棄を知った組合員が何か自分にできることはないかと考えて、『すぐに食べるのなら、棚の手前にある商品から積極的に選びましょう』と呼びかけたのがきっかけでした。受賞をきっかけに『てまえどり』に共感いただける全国の消費者の皆さんと一緒に食品ロスの削減に取り組んでいきたい」と話していました。

乳酸菌飲料メーカー 夏目裕執行役員(「Yakult1000」)

「Yakult1000」で受賞した乳酸菌飲料メーカーの夏目裕執行役員は「想定を超える反響の結果、流行語として選んでいただいたが、流行語だけで終わらずにこれからもお客様に納得して毎日続けて飲んでいただけるような商品に育てていきたい」などと話していました。