全柔連が「転び方プロジェクト」に取り組む背景の1つには柔道の競技人口が急速に減っていることが挙げられます。
柔道の競技人口は10年以上前から減少傾向にあり、2006年全国で20万人を超えていた競技人口は去年、12万人余りまで減っています。
こうした中、全柔連は柔道の利点を生かした多様なプログラムを開発して普及につなげようとしていて、高齢者の転倒事故防止のプロジェクトを発足させました。
全柔連によりますと、ヨーロッパでは高齢者と並んで転倒リスクが高い子どもを対象に学校現場で受け身を習得する授業を取り入れたところ、柔道に取り組む子どもが増えたケースもあるということです。
全柔連では「転び方プロジェクト」を通じて高齢者への普及をはかるとともに、若い世代が柔道に取り組むきっかけも作っていきたいとしています。
高齢者の転倒事故防止に 全日本柔道連盟がプロジェクトチーム
全日本柔道連盟は、柔道の受け身などの動作が高齢者の転倒事故の防止に役立つとして「転び方プロジェクト」というチームを新たに立ち上げ、研究や普及活動に取り組むことになりました。
厚生労働省によりますと、65歳以上の高齢者の転倒や転落事故による死者の数は増加傾向にあり、おととしは全国で8851人と、65歳以上の交通事故による死者のおよそ4倍に上っています。
こうした中、全日本柔道連盟=全柔連は柔道の受け身など衝撃から身を守る動作が高齢者の転倒事故の防止に役立つとして、研究や普及活動に当たるチーム「転び方プロジェクト」を新たに立ち上げました。
プロジェクトでは、専門家の協力で人が転倒するメカニズムを分析し、柔道の受け身の動作が安全に転ぶためにどう役立つかなどを研究します。
そして、海外での研究や医療現場の取り組みなどを参考に独自の転倒事故防止マニュアルを作成し、2025年をめどに自治体や医療機関と連携して高齢者を対象にした普及活動を行う計画です。
また、プロジェクトを進める拠点として新たに研究所を設けるとしています。
全柔連教育普及・MIND委員会のメンバーで、甲南大学の曽我部晋哉教授は「柔道は倒し合うスポーツであると同時に、倒されないようにするスポーツでもある。体のバランスをどう保つか、転倒したときに受け身の動作がどう役立つかなど転倒事故防止の観点で柔道の有効性を明らかにしていきたい。そして柔道ならではのマニュアルを作り現場に役立てていきたい」と話しています。