新たな総合経済対策 家計への影響は?

物価高や円安に対応するための今回の新たな総合経済対策。

電気料金や都市ガスの料金の負担を軽減するなど物価高騰への対応などが第1の柱として位置づけられています。

重い負担がのしかかっている私たちの家計にどんな影響があるのでしょうか。

電気料金 標準世帯で月額2800円軽減

来年の春以降、値上げの可能性がある電気料金については、家計や企業の負担を軽減するため、思い切った対策を講じたとしています。

具体的には、来年1月から1キロワットアワー当たり家庭向けは7円、企業向けは3.5円を補助し、家庭向けの電気料金についてはおよそ2割抑制します。

政府は、毎月の電力使用量が400キロワットアワーの標準的な世帯の場合、料金プランにかかわらず2800円軽減されるとしています。

支援の期間について政府は、脱炭素の流れに逆行しないよう、来年9月には補助額を縮小するとしています。

さらに毎月の請求書に直接反映するような形にしたいとしていて、具体的な方法について電力会社と調整することにしています。

都市ガス 標準世帯で月額900円軽減

一方、都市ガスについては、家庭や、年間契約量が少ない企業に対して1立方メートル当たり30円の支援を行います。

政府は、毎月の使用量が30立方メートルの標準的な世帯の場合、月額900円軽減されるとしています。

さらにガソリンなどの燃料価格を抑制するため石油元売り各社に支給している補助金は、年内が期限となっていましたが来年9月まで補助額を調整しながら継続することにしています。

現在は1リットル当たり35円を上限に補助していますが、今後、25円程度に引き下げるなど、原油価格の動向を見ながら段階的に縮小していく方針です。

政府としては、これらの対策によって、来年1月から9月にかけて標準的な世帯で4万5000円の負担軽減につながるとしています。

妊娠や出産で10万円相当の支援

また、コロナ禍で出生数が減少し、少子化が危機的な状況にあるとして、妊婦や子育て世代に対する支援を充実させる対策も盛り込まれています。

具体的には育児用品の購入や産前・産後のケア、子どもの一時預かり、それに家事支援サービスなどを利用する際の負担を軽減するため、来年から、妊娠や出産をした際に合わせて10万円相当の経済的な支援を行うということです。

ことし4月以降に生まれた新生児が対象で、所得制限は設けず、自治体にクーポンを発行するか、現金を支給するかなどを判断してもらうということです。

来年度の予算編成で継続的に支援を行うために必要な財源の確保について検討するとしています。

また、従来の「出産育児一時金」についても、来年度の当初予算で42万円から大幅の増額を図るとしています。

このほか、来年4月にはこども家庭庁を創設し、子ども政策を体系的に取りまとめて進めるなど、妊娠から出産、子育てまで一貫した支援の充実を図るとしています。

若い世代の省エネ住宅購入 100万円補助

今回の経済対策では、資材価格の上昇と住宅分野での脱炭素への取り組みを両立するため、若い世代が省エネ住宅を購入する際の支援制度が盛り込まれました。

対象となるのは、18歳未満の子どもがいる子育て世帯か、夫婦のいずれかが39歳以下の世帯です。

具体的には、再生可能エネルギーなどを活用して家庭の消費エネルギーを実質ゼロ以下にする「ZEH」と呼ばれる住宅や、これと同じ水準の省エネ性能をもつ「長期優良住宅」などを購入した場合、1戸当たり100万円を補助します。

また、省エネ性能を高めるリフォームへの支援も実施され、子育て世帯や若者世帯の場合、1戸当たり45万円を上限に、それに該当しない世帯にも30万円を上限に費用の一部を補助します。

成長支援や賃上げ対策は

日本経済の成長に向け、企業の賃上げを促すとともに成長分野への投資を拡大するための施策も盛り込まれています。

経済対策では、物価上昇を上回る継続的な賃上げを実現するため、事業の再構築や生産性の向上に取り組む中小企業などを対象に賃上げへの支援を大幅に拡充するとしています。

具体的には成長分野への事業の転換を後押しする「事業再構築補助金」について、一定以上の賃金の引き上げに取り組む事業者に対し、補助率を上げたり、上限額を増やしたりするということです。

また、半導体や蓄電池などのサプライチェーンの強じん化をはかるために国内の拠点に投資して安定的な供給体制を整備するとしています。

さらに円安を追い風にした輸出の拡大にも取り組むとしていて新たに輸出に取り組む中小企業に専門家を派遣し、商品開発や海外での販売促進、ECサイトを活用した販路拡大などを支援します。

このほか革新的なビジネスで成長を目指すスタートアップ企業の数を5年で10倍に増やすため、起業を志す若手人材を5年間に1000人規模でアメリカのシリコンバレーや東海岸へ派遣するほか、起業家を育成する海外拠点の創設も目指します。

子育て世帯の受け止めは

新たな総合経済対策について、子育て世帯の母親からは継続的な支援を求める声などが聞かれました。

神奈川県藤沢市に住む渡邉奈菜さん(32)は、ことし6月、長女の汐梨ちゃんを出産しました。

出産にかかった費用はおよそ70万円と、出産育児一時金の42万円では足りず、ほかにも哺乳瓶やベビーカーなどの育児用品をそろえるために、10万円以上かかったということです。

また、ことしになって値上げされた紙おむつや粉ミルク、おもちゃなどの購入費用に毎月3万円近くかかっているということです。

渡邉さんは、「娘に使ってあげられるお金が増えてうれしい反面、思っていた以上に出産や育児はお金がかかり全然足りないのが本音です。今後、保育園代や養育費などさらにお金がかさみ、2人目や3人目を産みたくても経済的に踏み込めないと考えることもあるため、一時的な支援ではなく長く広い継続的支援をお願いしたいです」と話していました。

光熱費が大幅に上がった家庭では

家庭や企業の電気料金の負担緩和策などを盛り込んだ政府の総合経済対策について歓迎する声が聞かれました。

東京・東村山市に住む佐々木和恵さん(68)は、会社勤めの夫と2人暮らしでことしに入ってから光熱費の負担が大幅に増えたといいます。

電気やガスの使用量はほとんど変わっていないのに、今月請求された料金は去年の同じ月と比べて電気代はおよそ3割上昇して4300円余り、ガス代は500円増えました。

食料品などの値上げが相次ぐ一方で収入は増えていないため、テレビの主電源をこまめに消したりノートパソコンのコンセントを抜いたりして、少しでも電気代を抑えようとしています。

また、ガス代を抑えるためにスープや煮物などをつくる際は鍋を加熱したあとで綿が入った帽子をかぶせて鍋の余熱を利用した保温調理にするなどの工夫をしています。

今回の総合経済対策で電気代が電力の使用量に応じて1キロワットアワー当たり7円を補助されると、佐々木さんの世帯では今月、請求された料金でみると3400円余りが減る計算となり、その分、食費などにまわすことができると考えています。

佐々木さんは、「電気代、ガス代の負担が減るのでありがたいと思う一方で、そのお金は税金なんだと思ってしまう面もあります。今回の光熱費の値上がりをきっかけに多くのエネルギーを海外に依存していると改めて認識しました。長期的には日本のエネルギーをどうしていくか考えていかないといけないと思います」と話していました。