北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射 東北上空通過し太平洋に落下か

防衛省によりますと4日午前、北朝鮮から弾道ミサイル1発が発射され、東北地方の上空を通過しておよそ4600キロ飛行し、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。北朝鮮が日本の上空を通過する形で弾道ミサイルを発射するのは5年前の9月以来で、飛行距離は、北朝鮮が発射したなかではこれまでで最も長いとみられています。IRBM=中距離弾道ミサイル級以上の可能性があるということで、防衛省が情報の収集を進めるとともに、発射の意図について分析を進めています。

防衛省によりますと、4日午前7時22分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイル1発が東の方向に発射されました。

ミサイルは午前7時28分ごろから7時29分ごろにかけて青森県の上空を通過し、午前7時44分ごろ、東北地方の東およそ3200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。

最高高度はおよそ1000キロ、飛行距離はおよそ4600キロと推定され、自衛隊による「破壊措置」は実施していないということです。

飛行距離は、北朝鮮が発射した弾道ミサイルのなかでこれまでで最も長いとみられ、IRBM=中距離弾道ミサイル級以上の射程があると考えられるとしています。

北朝鮮は過去4回、中距離弾道ミサイル級の「火星12型」を発射しており、同型の可能性があるとしています。

防衛省などによりますと、これまでのところ、被害の情報は確認されていないとしています。

この発射に関連して政府は、人工衛星を通じて自治体などに緊急に情報を伝えるJアラート=全国瞬時警報システムやエムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信しました。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について、政府がJアラートやエムネットで情報を発信したのは、5年前の2017年9月15日以来です。

北朝鮮は、アメリカ軍と韓国軍が9月下旬に日本海で共同訓練を行ったことなどに対して反発を強め、9月25日以降、1週間で弾道ミサイルを4回発射していました。

北朝鮮によるミサイル発射は巡航ミサイルも含めてことし23回目です。

防衛省は情報の収集を進めるとともに、発射の意図について分析を進めています。

松野官房長官「飛距離約4600キロと推定」

松野官房長官は、NSC=国家安全保障会議の閣僚会議のあと記者会見し、北朝鮮から発射された弾道ミサイルは1発であることを明らかにしたうえで「青森県付近の我が国上空を通過した後、7時44分頃、太平洋上の我が国排他的経済水域外に落下したものと推定される。現時点で被害報告などの情報は確認をされていない。政府としては、引き続き、我が国の領域、およびその付近の落下物の有無などについて、関係機関を通じて確認作業を実施しているところだ」と述べました。

また、北朝鮮から発射された弾道ミサイルについて、飛距離はおよそ4600キロ、最高高度はおよそ1000キロと推定していると明らかにしました。

中距離弾道ミサイル これまで4回発射

ことしの防衛白書によりますと、北朝鮮は液体燃料方式の中距離弾道ミサイルを、これまでに4発発射しています。いずれも北朝鮮が「火星12型」と呼ぶミサイルです。

【1回目 2017年5月14日】
最初の発射は5年前の2017年5月14日で、朝鮮半島の東、およそ400キロの日本の排他的経済水域の外側に落下しました。およそ30分をかけて800キロほど飛び、高度は2000キロを大きく超えたとみられ、通常よりも発射の角度を上げて高く打ち上げる、「ロフテッド軌道」だったと推定されています。通常の軌道で発射されたとすれば射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられ、アメリカ軍の拠点があるグアムが射程に入ります。
【2回目 2017年8月29日】
2回目が2017年8月29日です。北海道の渡島半島や襟裳岬の上空を通過し、襟裳岬の東、およそ1180キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離はおよそ2700キロ、最高高度は襟裳岬付近の上空でおよそ550キロに達したとみられています。
【3回目 2017年9月15日】
3回目が2017年9月15日です。2回目と同様、渡島半島や襟裳岬の上空を通過し襟裳岬の東、およそ2200キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離は、8月の発射より1000キロ長いおよそ3700キロに達しました。また、最高高度も8月の発射を250キロ上回り、およそ800キロだったと推定されています。
【4回目 2022年1月30日】
そして4回目がことし1月30日です。北朝鮮内陸部から発射され、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されています。飛行時間は30分ほど、飛行距離はおよそ800キロで、最高高度はおよそ2000キロに達し、「ロフテッド軌道」で発射されたとみられています。また、このときのミサイルも、通常の軌道で発射されたとすれば、射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられています。

中距離弾道ミサイルをめぐって北朝鮮は2016年に「ムスダン」と呼ぶミサイルの発射を繰り返しましたが、この年の10月に2回連続で発射に失敗していて、防衛省は中距離弾道ミサイルとしては「火星12型」の開発や実用化に集中している可能性が考えられるとしています。