香港”絵本で扇動”として出版の5人に禁錮1年7か月の実刑判決

政府に批判的な言論に対する統制が強まっている香港で、絵本を出版し政府への憎悪をあおったとして扇動の罪に問われていた男女5人に対し、裁判所は禁錮1年7か月の実刑判決を言い渡しました。

この裁判は、香港の言語療法士でつくる労働組合のメンバー男女5人がおおかみから村を守るために羊たちが団結する姿などを描いた3冊の絵本を出版し、政府に対する憎悪をあおったとして扇動の罪で起訴されたもので、5人は無罪を主張していました。

裁判所は7日、この絵本が2019年に起きた政府に対する抗議活動を扱っているのは明白だとしたうえで「中国政府をおおかみになぞらえ、香港にやってきて家を取り上げ幸せな生活を破壊すると、子どもたちに思い込ませて、政府への憎悪と不満を募らせようとしている」として、有罪判決を言い渡しました。

さらに裁判所は10日の公判で5人にいずれも禁錮1年7か月を言い渡し「被告の行為は子どもたちを洗脳するものだ」と指摘しました。

香港では、おととし反政府的な動きを取り締まる国家安全維持法が施行されたあと言論に対する統制が強まっていますが、絵本の内容が扇動罪に問われたことは波紋を広げていました。

国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルは7日、声明を出し「今の香港ではおおかみと羊を描いた絵本を出版すると刑務所に入れられる。判決は香港での人権が崩壊している一例だ」と批判しています。