自然科学分野の引用論文数 日本は過去最低の12位に後退

自然科学の分野で、おととしまでの3年間に発表され引用が多かった論文の数を各国で比較したところ、日本は過去最低の12位に後退し、初めてトップ10から陥落しました。

調査したのは文部科学省の科学技術・学術政策研究所で、おととしまでの3年間に世界で発表された生物学や物理学など自然科学の22分野の論文を国や地域ごとに分析しました。

論文の引用回数は「質」の高さの指標とされ、各研究分野で上位10%に入った論文の数は、おととしまでの3年間の平均で日本は3780本と前回からわずかに増えたものの、韓国などに抜かれ10位から12位に後退。

1981年にデータを取り始めて以降、初めてトップ10から陥落しました。

また、論文の総数でみると、同じく3年間の平均で6万7688本で、前回から1つ順位を落とし5位に後退しました。

文部科学省は、自然科学の分野で日本の存在感が低下しているとしたうえで、要因として、ここ20年で国内の大学の研究開発費が主要国に比べ伸びていないこと、研究時間の確保が難しいことを挙げています。

加えて高い専門性を持ち、大学などで研究の担い手となる博士号取得者の数が、アメリカや中国、韓国でこの20年ほどで倍増した一方、日本では減少傾向が続いているとしています。

専門家「人に投資していない」

今回の調査結果について、各国の科学技術政策に詳しい政策研究大学院大学の永野博客員研究員は「論文を書く若い研究者が増えないと、論文も増えない。博士号の取得者の数はほかの国では増えているのに日本ではどんどん減っている。人に投資していないのがいちばんの問題で、危機感が足りない」と述べ、現状における問題点を指摘しました。

そのうえで「博士号を取ってもなかなか就職できないのは日本だけで、社会で働けるようにして育てた人材がうまく活躍できるシステムにしないといけない。産業界と大学の間の協力が今ほど求められるときはなく、博士号を取得する人を増やすとともに、その後の支援も含めて真剣に考える必要がある」と指摘しています。