知床 沈没事故で運航自粛の小型観光船 自主ルール定め運航再開

知床半島沖で観光船が沈没した事故を受け、今シーズンの運航を自粛していた斜里町ウトロの小型観光船の事業者は、安全運航の自主ルールを定めた上で、16日から運航を始めました。

斜里町ウトロで小型観光船を運航する事業者でつくる「知床小型観光船協議会」では、4月の観光船沈没事故を受けて今シーズンの運航を自粛していましたが、運航判断を複数社で協議し、原則、単独運航をしないといった安全運航の自主ルールをまとめ、16日から運航を始めました。

初めての便となる午前10時発の観光船には乗客およそ20人が乗り込み、全員が救命胴衣を着用した後、出港しました。

午後に後続の船が出航するまで1時間以上の間が空くため、自主ルールに基づいて緊急時に救助にあたる同業者の船も一緒に出港し、単独での運航を避ける形をとりました。

東京から訪れた女性は、「人の手の入らない雄大で素晴らしい景色を見ることができました。並走している船がいたのも安心でした」と話していました。

群馬県から訪れた70代の男性は「ニュースで安全対策を知りましたし、船内で設備の説明もあったので問題ないと思って乗りました」と話していました。

16日午後にはさらに2便が運航する予定でしたが、航路上の風の予報が自主ルールの運航中止条件の風速8メートルを超えることなどから協議会で話し合った結果、いずれも欠航としました。

「知床小型観光船協議会」の神尾昇勝新会長は、「コストや利益よりもまずは安全を考えながら、乗ってもらえる人に今まで以上に安全運航することをPRして信頼回復していきたい。自主ルールについても、改善点はおのずと出てくると思うので協議会で話し合いながら安全運航につなげていきたい」と話していました。

自主ルール詳細

「知床小型観光船協議会」に所属する、各社がホームページに公表した、自主ルールです。

ルールでは、
▼運航判断は複数の会社で協議する。
▼原則、単独での運航をしない。
▼営業期間を統一する。
▼自分たちで定めた、通信手段や安全設備を船に載せるといった
4項目を定めています。


【1 運航判断について】

運航判断については、船長や運航管理者が当日の気象情報をもとに必ず複数人で判断を行うとともに、複数の会社で協議をして単独での判断はしないこととしています。

【2 単独運航の回避】

そして、原則、単独運航はしないこととして、
▼予約の人数によって1隻での出航となったり、
▼次の船が出航するまでに1時間以上の時間差がある場合は、
港や航路の途中に待機する船を配置することにしています。

【3 営業・コースの制限】

また、営業期間は毎年4月28日から10月20日までとした上で、知床岬を巡るコースは海上が比較的、安定する6月1日から9月30日までに限定することにしています。

【4 連絡手段や安全設備】

さらに、連絡手段として、▼衛星携帯電話や、▼業務無線、それに▼知床岬周辺でも通信ができる通信会社の携帯電話を用意することを取り決めました。

また、法律に定められた船に積むべき装備以外にも、▼海に落ちた際に備えての毛布などや、▼船長が操だ室からでもエンジンの異常に気がつける監視モニターを船に載せることを申し合わせています。

これらは、事故が起きた「知床遊覧船」が1社単独で運航した上で、運航管理者も不在の中、事故を起こしたことを受けて、その再発防止を強く意識して作られた自主ルールとなりました。